大野 悠 (おおの ゆう)
<詩作品>
小鳥の夢
新しい朝の
凍えた霜の芯から
熱く立ち上がるものがある
寒風にこぼれ散る
サザンカの花
その葉陰には幾つもの
可愛い蕾のまなざしが
赤く燃えている……
夜は一線のむこうに消え
はっきりと朝が来た
はるかな海の彼方
太陽にせかされて
けさも 金色の竜が
光芒をきらめかせながら駆け上がり
あでやかに乱れ
やがて静かに姿を消す
空は春を呼ぶ水の色
時間があふれ
光があふれ
ふくらむ ふくらむ
小鳥の夢
両手をしっかりと繫いで
波が歓声を響かせながら
磯辺に向かって
激しく駆けよってくる
「ぼく」はその砕け散る
真っ白な飛沫の中から
広い空へと飛び立つのだ
仏の里―臼杵石仏にて
ふんわりと両手を広げたなだらかな丘に
優しく抱かれた平和な里
丘の断崖に刻まれた仏は五群七十五体
和やかな慈愛の思いみなぎらせ
詣でる人々を光に誘う仏の里
疲れはて心が重くよどむ日は
長い道程をひたすら歩いて
この里を目指した
信仰すると言うよりも
足が自然に私をここに運んでくる
小さい頃からの労働と
大きな戦争でもまれた体が
弱った心を励ますために
ひとりでにこんな習慣をつくってくれた
大日如来の馥郁としたお顔の素晴らしさ
お像の足元にきちんと飾られた
落ちたお首の前に座りじっと見つめて
時を過ごすのが好きだった
何をお願いするというよりも
幼児のようにこの里に
抱かれて過ごした
仏の里の思い出
*1 渡辺澄夫著『大分県の歴史』による。
*2 今は復元されている。